少額訴訟による解決方法について
はじめに
少額訴訟とは、簡易裁判所における民事訴訟のうち、60万円以下の金銭の支払請求を目的とする訴訟であり、原則として1回の審理で判決がなされるという制度で、平成10年1月の民事訴訟法改正に伴い、国民に利用しやすい司法制度の実現に向けて導入されたものです。
交通事故の場合、加害者が過失を認め「費用は全額負担する。」と言いながらも、時が過ぎることによって過失を認めず、修理費等を請求しても支払いがない場合は、少額訴訟の活用も解決の方策となることから、少額訴訟の進め方、手続き等について説明します。
少額訴訟の対象
訴訟の目的物の価値が60万円以下で、金銭の支払請求を目的とする訴えに限られます。従って60万円を越える金銭の支払いを求める訴えや、60万円以下であっても、物の引渡し請求及び債務不存在確認等の訴訟は、少額訴訟の対象とはなりません。
訴訟提起の裁判所等
少額訴訟を提起する裁判所は、原則として債務者(被告)の住所地を管轄する簡易裁判所です。なお、少額訴訟の制度は一人が一年のうちに利用できる回数を、同一の簡易裁判所につき10回までと制限されており(訴状に提起の回数を記載する)、 利用回数を無制限にした場合、一部の業者による少額訴訟の利用が集中し、一般の人による本制度の利用が困難になるからです。
審理手続
少額訴訟手続の審理は、原則として第一回の口頭弁論期日に即日結審し、判決の言い渡しを行います。従って、証拠調べは当日、即時に取調べができるものに限られます。
審理当日は、裁判所が当事者双方の言い分を聞き、証拠書類は、審理の際に調べられるものに限られ、証人尋問も原則として当日法廷にいる者のみで行われ、それに基づいて判決を下します。
判決に対して不服がある場合、控訴はできませんが、判決をした裁判所への異議申し立ては可能です。
少額訴訟の注意点
・相手の所在がわからないと、少額訴訟を提起することができない。
・被告が少額訴訟の手続きに応じない場合は、通常の民事裁判に移行される。
・提訴後は、原告からの通常訴訟による審理を請求することができない。
判決による支払の猶予、分割払い等
通常の判決と違い、被告の資力その他の事情を考慮し、特に必要がある場合には、支払の猶予、分割払い又は遅延損害金免除の判決もあります。ただし、支払の猶予、分割払いの期間は3年を超えない範囲内となります。
話し合いによる和解
少額訴訟手続においても、一般の民事訴訟手続と同様、裁判手続の中で和解することができます。特に、簡易裁判所においては、司法委員が立ち会って和解の補助をしますが、少額訴訟手続においても、この司法委員の制度が活用されています。
判決に対する不服の方法
少額訴訟の判決に対しては、不服がある場合でも控訴はできず、異議申し立てのみが許されています。異議申し立ては、判決正本送達後2週間以内に判決をなした裁判所に行います。異議の申し立てにより、訴訟は口頭弁論終結前の状態に戻り、同じ裁判所で通常手続での審理及び裁判が行われます。
小額訴訟手数料(切手代は除く) | |||
請求額(訴額) | 手 数 料 | 請求額(訴額) | 手 数 料 |
0〜10万円 | 1,000円 | 〜40万円 | 4,000円 |
〜20万円 | 2,000円 | 〜50万円 | 5,000円 |
〜30万円 | 3,000円 | 〜60万円 | 6,000円 |
おわりに
少額訴訟は、60万円以下の金銭紛争の場合、弁護士に依頼せず、費用も低額で短時間に解決することができ、しかも簡単な手続きで訴訟を起こせる制度です。上手く活用できれば迅速な債権回収(損害の回復)が可能となります。